国民年金036 遺族基礎年金の要件③ 遺族との関係性の要件(ⅱ)生計維持要件の特別なケース 

(1)はじめに
 遺族基礎年金を受給するためには、
 死亡した被保険者等と、遺族(子のいる配偶者・子)との関係性の要件として、
 「生計維持要件」が必要です。
 生計維持要件は、
 ①生計同一要件②収入要件があり、両方を満たす必要があります。

 ①生計同一要件は、死亡した方と遺族について、
  ⓐ原則として、住所と世帯の両方が同じだった状態をいいます。
  ⓑ住所が同じだが、世帯が違う(二世帯住宅などのとき)ときは、
   このままでは生計が同一と認められないので、
  「別世帯となっていることについての理由書」を提出する必要があります。
  ⓒ住所も世帯も違う(別居のとき)ときも、
   このままでは生計が同一と認められないので、
  「同居についての申立て」や、
  「生計同一関係に関する申立書」を、
  「生計同一関係を証明する書類」を添付して提出する必要があります。
 (※生計同一要件については、前々回の記事。最後にリンクを貼っておきます)

 ②収入要件は、対象の遺族(子のいる配偶者・子)について、
  前年または前々年の、
  収入が850万円未満、または、所得が655万5000円未満
であること。
  (一時的な所得は除いて判定します)
  上記の事情はなくても、定年退職や収入減などの事情で、
  近い将来(おおむね5年以内)に、
  収入が年額850万円未満または、
  所得が年額655万5000円未満になる
と認められれば、
  その旨の証明すれば、収入要件を満たすことになります。
 (※収入要件については、前回の記事。最後にリンクを貼っておきます)

 しかし、夫婦間でのDV(ドメスティックバイオレンス)などの事情で別住所にしているときは、生計同一要件をそのまま当てはめることは、暴力を受けている方に酷といえます。
 また、夫婦や親子間で、行方不明の方がいるときは、生計の同一性や収入について、別に考える必要があるといえます。
 今回は、これらのケースについて書いて、最後に生計維持要件についてまとめていきたいと思います。

(2)DVで避難していたケース
①配偶者からの暴力(DV)の被害を受けて、緊急避難的に別居している場合、
 独自の基準により、生計同一要件を判断します。
 すなわち、生計の同一性の判断を「死亡したとき」に限定せずに、
 ・別居期間、
 ・別居の原因、
 ・その原因の解消の可能性、
 ・経済的な援助の有無、
 ・音信や訪問の有無などを、総合的に判断
して、
 別住所・別世帯の「やむを得ない事情」があるかを判断します。

②別居しているDVの被害者の生計同一要件
 次のいずれかに該当する場合は、生計同一要件を満たすといえます。
 ⓐDV防止法に基づき裁判所が行う保護命令にかかる方
 ⓑ婦人相談所、民間シェルター、母子生活支援施設等で一時保護されている方
 ⓒDVからの保護を受けるために、婦人保護施設、母子生活支援施設等に入所する方
 ⓓDVを契機として、秘密保持のために基礎年金番号が変更されている方
 ⓔ公的機関や公的機関に準ずる支援機関が発行する証明書等を通じて、
  上記に準ずると認められるDV被害者の方
 ※経済的な援助や音信・訪問が長期間(おおむね5年を超える期間)にわたる場合は、生計同一要件が認められにくくなります。

③DV被害者の生計同一要件を証明する書類
 ・裁判所が発行する、保全命令にかかる証明書
 ・住民基本台帳事務における支援措置申出書の写し
  (DV被害者である旨が相談機関等の意見等で証明されているもの)
 ・配偶者暴力相談支援センター発行の、被害者の保護に関する証明書
 ・公的機関その他これに準ずる支援機関が発行する証明書

※DV被害者の方は、誰にも相談せずに一人で抱え込んでしまうことが多いようです。
 遺族年金の受給に関しては、公的な証明がないと、生計同一要件の認定が難しくなります。

 遺族年金の受給にかかわらず、まずは匿名でもいいので、公的機関に相談されるといいでしょう。

(3)行方不明のとき
 一家の働き手が行方不明になったときなどは、残された家族の生活が脅かされます。
 この場合、死亡したかが判明していなくても、遺族年金が受けられることがあります。
 すなわち、失踪宣告を受けることにより、
 ①船舶や飛行機事故によるときは、
  行方不明になって3か月たったときに、
  行方不明になった時点死亡したと推定されます(特別失踪)
 ②その他の場合は
  行方不明になって7年たった時点死亡したとみなされます(普通失踪)
 そして、生計維持要件、被保険者や遺族の要件は、
 ①②で死亡したと推定またはみなされた時点を基準に判定されます。

 (※なお、あとで生きていたことが分かったときは、
  ①(推定)は、死亡判定が取り消しになりますが、②(みなし)は、死亡判定は覆りません)

今回はここまでにします。
次回は、遺族基礎年金の要件についてまとめます。
お読みいただきありがとうございました。

※生計維持要件のうち、生計同一要件 国民年金034
※生計維持要件のうち、収入要件   国民年金035

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